第3回 新鋭 九層展 ~開催まで~

第1回・第2回と好評を得ました『新鋭 九層展』。3回目となる今年の九層展を、選抜から開催までの模様をダイジェストでご報告させていただきたいと思います。

①メンバー選出~顔合わせ(2月28日)
1年のブランクを置いての九層展復活!14回滴仙展の特別展として併催された第3回新鋭九層展。若手作家のさらなる育成と技術の向上を趣旨として先生方より再び九層展の場をいただきました。幹部役員の推薦により、前回のメンバーである野田岳豊、小郷翔空、新メンバーとして池田樂水、川崎華芳、黒田清泉、永里香雪、吉川桂堂、森田錦風、横手希翔の9名が選出され、それぞれが自己紹介をするも不安を抱え、戸惑いながらのスタートとなりました。(チームリーダーは野田岳豊氏に決定)顔合わせ時に次期企画会議までの課題として野田リーダーより「どんな展覧会にしたいのか」「9名の共通のテーマ」「各自の作品イメージ」について考えてくることが言い渡されました。

九層報告 (1)

②第1回企画会議(3月10日)
不安と期待の第1回企画会議。九層展は3回目であり、前回・前々回の例があるとは言えほとんどのメンバーが初めての体験。前回とは一味違ったものをという思いと前回を踏襲しようと言う思いが交錯しながら会議が進む。ここでは全体のスケジュール感と九層の意味を再度確認するとともに各自の作品について話し合いが行われました。
創作作品のイメージを出し合い、それぞれ臨書する古典が重ならないようにしよう、額装、軸、巻子、折帖とそれぞれの作品の仕上がりに変化を出そう、そして何よりも来場いただく方々に書を身近に感じていただけるよう創作作品には略文と意味を記載しよう、小作品は分り易いものにしよう、と次々と意見が出されました。また後述する「王羲之から空海へ」展を9人で見学し、古典作品の参考にすること、共通テーマは今回の会場となるデザイン・クリエイティブセンター神戸KIITO(元生糸製糸工場)から連想し、「つながる、綴り織りなす」【糸】とすることに決定。

九層報告 (2)九層報告 (3)
今回の会場は例年の原田の森ギャラリーが耐震工事のため使用できず、初めて使用する会場となるため事務所での打合せの後、会場見学に。だだっ広い体育館のような会場を目の前にして果たして展示がうまく収まるのか?照明やセッティングは?・・・・と不安もよぎりましたが、ワンフロアーで開催できるメリットも大いにあると感じた見学会でした。

③第2回企画会議 「王羲之から空海へ」「日本書芸院展(役員展)」見学 (4月21日)
今年は奇しくも大阪市立美術館開館80周年・日本書芸院創立70周年記念として大阪市立美術館で「王羲之から空海へ」の特別展が開催されることになりました。書芸院展(役員展)の時期とも重なっており両方の展覧会を見学することに。白紙の状態から作品を作っていく私たちにとって大変勉強になる展覧会になるだろうと胸が高鳴ります。臨書作品を作るにおいて本物を目の当たりにすることができるのですから。当日は特別展スタート後間もない時期であったため、会場はそれほどの混雑もなくそれぞれがお目当ての作家の作品とじっくり向き合うことが出来ました。見学予定の2時間はあっという間に過ぎ、後ろ髪をひかれる思いで美術館を後にし、昼食をしながらの第2回目の企画会議。作品のイメージをメンバーそれぞれが発表。九層展の案内はがきは池田樂水氏が用意してくださった4つの案から、すっきりとしたモダンなカードに決定。

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午後は大阪国際会議場で開催中の書芸院展(役員展)を見学。創作作品のヒントが得られるのではと意気込んで会場へ移動。表具や紙の質・色、墨色の違い、書体から感じられる作者の息遣いまでを感じとるようにじっくりと鑑賞しました。中でも魁星作家コーナーでの大作を目の当たりにし唖然と立ちすくむ程の衝撃を受け、意識を持つとこうも鑑賞の仕方が違うものなのかと苦笑しきりでした。

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④「作品制作・表具選定」(6月5日)
作品作りにおいては、伊藤一翔先生から「展覧会は各会の先生方も多く来場される。その方々の眼に耐えうる作品を」とのお言葉でハードルは思いっきり上がり、生半可な気持ちは一蹴されました。作品を選別してくださる先生方の表情はいつもの温厚な表情から一変し、鋭い眼光で一つ一つの作品をご覧になる。その姿にプロの厳しさを垣間見た気がしました。九層展は滴仙会の看板を担う展覧会でもあり、選抜されたメンバーはそれなりの自覚と覚悟が要求されているのだと改めて実感。

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あっという間の1か月半が経ち、いよいよ作品提出。何度も何度も試行錯誤を繰り返して出来上がった作品たちの旅立の時。前川静観堂さまのご協力により表装は各人のリクエストを聞いて頂き、より自分らしさを表現しようとじっくりと打合せを行いました。それぞれの作品をより生き生きと、より個性的に輝かすことが出来るのが表具であるのだと表具の打合せを通して諸先輩方から教えていただくことが出来ました。

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⑤九層展開催(7月8日~10日)
いよいよ展覧会がスタート。各自の趣向を凝らした作品が展示され、池田樂水氏作のパネルやキャプションがセッティングされるととても素敵な空間が創出されました。こうして開催に至ることが出来たのも、時には厳しく、時には優しく(?)日々ご指導くださる大重筠石先生・伊藤一翔先生はじめ諸先生方のおかげと感慨無量でした。

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会期中は心配していた天候も回復し、多くの観覧者でにぎわうことになりました。初めてお会いする他会派の先生方や初対面の方と作品を通してお話する機会に恵まれたり、会場を訪れた方々から「書道やってみたい」、「いろいろな作品があって楽しいね」「元気をもらえたわ」などなどうれしい感想をいただいたりと、メンバーそれぞれ大いに刺激になり、自分が思っていた以上に注目されている九層展であることに驚きと感動の時間を過ごしました。

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また、改めて「作品を作ることが出来る幸せ」「ご指導いただける幸せ」「作品を展示さていただける幸せ」「九層展メンバーとの出会い」・・・数え上げるときりがないほどの幸せを感じる時間でもありました。
まだまだ未熟で未完成な作品たちではありましたが、真摯に自分の作品と向かい合う機会を持つことが出来、貴重な経験をさせていただけたと感謝の気持ちでいっぱいです。

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一からご指導いただいた先生方、日々励ましてくださった先輩・友人そして九層展のメンバー、ずっと見守ってくれた家族、展覧会の運営に携わってくださった先生方、展覧会に足を運んでくださった方々・・・本当にたくさんの人に助けていただき、支えていただいたおかげで無事に展覧会を終えることが出来ました。本当に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

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これからも真摯に書に向き合い、心の成長とともに作品も成長していくことを信じて精進していきたいものだとメンバー一同心を新たにいたしました。
どうぞこれからもご指導、ご支援をいただきますようよろしくお願いいたします。
最後になりましたが、ますますの滴仙会の発展を祈念し「新鋭 九層展」の報告とさせていただきます。 (理事 横手希翔)

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